街なか再生海外事例研究Ⅲ 米国メインストリートプログラム 詳細解説と日本への適用可能性
新たな都市再生の展開
米国メインストリート・プログラム
~メインストリート・プログラムの詳細解説と日本への適用の可能性~
目 次
はじめに
■ 用語集
I メインストリート・プログラムの概要
1.メインストリート・プログラムの特徴
2.メインストリート・プログラムを構成する4つのアプローチ
3.メインストリート・プログラムの実施体制
4.メインストリート・プログラムの財源
5.プログラムの成功要因
II メインストリート・プログラムQ&A
1.日本の中心市街地におけるメインストリート・プログラムの有効性
2.組織・財源
3.人材育成・人材活用
4.ビジネス支援、ビジネス育成
5.歴史的建築物の保全・再利用、まちなみデザイン
6.ハードな事業のソフトなまちづくりの連携
7.目標と評価
III 日本における今後の取り組みについて
1.米国メインストリート関係者からの提案・提言
2.日本における今後の取り組みのあり方
IV 米国メインストリート関係者の招聘記録
1.様々な催しの記録
2.メインストリート関係者による各都市の印象・評価
V ケーススタディ
1.対象都市の選定
2.川越市 旧市街地
3.具志川市 中心市街地安慶名地区
はじめに
我が国において、中心市街地活性化の衰退が進む中、その歯止めをかけるために、平成10年 "中心市街地活性化法(※)"が施行されてから、全国的にその活性化のため、様々な取り組みが行われているところです。
※中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律
(財)区画整理促進機構に設置した街なか再生全国支援センターにおいては、中心市街地活性化の国土交通省支援の窓口として、各種講習会、全国規模の情報収集・提供、様々な自主研究を通じ、活性化に取り組まれる皆様のお役に立てるよう微力ながら取り組んでいますが、その活動の折々に触れ、中心市街地活性化に携わる実務担当者からお聞きする悩みは、活性化を成功させる取り組みの方法・手段とそれを実践するために必要な『組織』、『人材』、『財源』の3つに集約されるのではと実感しています。
現在、日本においては、中心市街地活性化を推進する母体の1つとしてTMO(Town Management Organization)があり、各種取り組みを行っていますが、当センターにおいては、同じように中心市街地の衰退が深刻な諸外国ではどのような組織がどんな活動をし、それが有効なものであるかとの視点を持って調査研究をしてきました。その中で、一昨年より米国におけるNPO組織を中心としたメインストリート・プログラムによる取り組みに着目し、現地で調査、関係者からヒアリングを行い、昨年はその取り組み母体となるナショナルメインストリートセンター及び現場レベル活躍されているマネージャーの2名を日本に招聘し、メインストリート・プログラムによる取り組みを学び、以下の知見を得ました。
- 米国では日本同様、モータリゼーションの波、大型商業施設の台頭、居住の郊外移転が進み、日本より30年ほど早い段階から中心市街地の衰退は社会問題となっていた。
- NPO組織が中心市街地活性化の主体となり、全米約1700地区で取り組み、成果を挙げている。
- ナショナルメインストリートセンターで開発された4つのアプローチの手法は誰にでも容易に理解できるもので、それにより、様々な施策、取り組みが横断的に実施可能であり、多くの事例でその有効性は実証されている。
- 都市の規模の大小にかかわらず適用可能である。
- 日本でも、類似したアプローチにて実践し、大きな成果を挙げている都市の事例もあり、そのアプローチ手法、NPO組織のシステムは日本流に噛み砕いて応用が十分可能である。
メインストリート・プログラムについては、昨年発行の米国メインストリート・プログラム-4つのアプローチ手法に学ぶ-にてその全容と実践10都市の取り組みを紹介しております。
本書では、上記を補完するものとして、昨年のメインストリート関係者を招聘した際に開催した講演会、国土交通省を始めとする関係団体との意見交流や先進都市事例での現地視察などを通し得られた新たな知見を加え、各所で出された質疑に対して応えるに併せて、日本での適用・導入を主眼として取りまとめております。
今後、当センターでは、米国ナショナルメインストリートセンターとの連携を深め、その優れたアプローチ手法と組織のシステムを日本に応用することで、前述の3つの課題をあわせて中心市街地の衰退を解決する突破口の糸口として、その適用の可能性を模索していきたいと思っております。
平成15年6月
財団法人 区画整理促進機構 理事長 和 田 祐 之
※本書は昨年発行した『米国メインストリート・プログラム-4つのアプローチに学ぶ-』の続編であり合わせてお読みいただくことをお勧めいたします。